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2017年4月13日 (木)

映画『秋の理由』感想

『秋の理由』 2016年 監督:福間健二

●出演:伊藤洋三郎/佐野和宏/趣里/寺島しのぶ(敬称略)他

●あらすじ(秋の理由公式サイトから)
"―ぼくはまだ黒い芯を高ぶらせている―"


 2016/11月に鑑賞済みですが…感想アップがもろもろの理由でものすごーく遅くなりました。すみません。。

 監督は詩人さんでもあるんですね。最初のオープニングの映像がすでに詩的です。

 書けなくなった作家、村岡=佐野和宏さん。
 それでも信じて支える編集長、宮本=伊藤洋三郎さん。
 仕事上の信頼関係であり、男の友情。

 この関係は、、作家にとっては苦しいでしょうね。

 書けないっていっても大まかに言って、スランプ? それとも永久に書けなくなってるのか…。深~い淵の底みたいな感じです。
 書けない上に、それでもいつか書いてくれることを信じている人に待たれる気持ちって、かなりつらい。。

 それを支える奥さん、美咲=寺島しのぶさん。書けなくて苦しんでて、何もできなくなってる夫を支えていて。
 これも苦しい。多分、すっきり書くのやめて別の生き方でもしてくれたら、少しはすっきりしたのかもしれません。

 そこへ登場した若い女性、ミク=趣里さん。彼女もどこか、過去に何かあったような、暗いものを抱えているけど村岡の文章に惹かれているミステリアスな子。


 映画の中に、若い人など数人が道路から入ったところでかたまって寝ている? ようなシーンがありますが、あれは心象風景なんでしょうね。
 村岡が彷徨った時にも彼らの中で眠るシーンがありますが、あれは…行き場を失った悩み深い人たちの唯一の居場所のような存在なんでしょうか。


 とても詩的である意味難しい表現が続くようで、映画の後のトークで洋三郎さんが話されていたように、じつは真ん中に流れるストーリーはシンプルな気がしました。


 書けない苦しみを抱え、おそらくもう再起はないと絶望しているのに、旧友の編集長に期待されて最後は拒否?する作家⇔そんな作家を支えてるいるのに、拒否される編集長。どっちもジレンマ。。

   もう書けない、何もできない⇔夫を愛してるけど(してたはずだけど)、現状を変えない夫とそれを支える存在だけの自分に絶望している妻。

 ミクの背景はわかりません。ただなんとなく、あまり人から受け入れられない経験をしてそうな気がします。居場所がない、というような。そんなだから、悩める若い作家を応援しようとしたのに、その彼があっさり彼女を連れてきたのを見た時(その彼が普通すぎる人であることに気づいた時?)には大号泣…。

 そんなせつない世界が、不思議で詩的な映像で描かれていました。


 俳優さんについて。

 宮本の洋三郎さん。
 画面に初めて出てきた時、さすがいい男!決まってるね! と、映画の本編以前に不純な目でまず見てしまいました。。。村岡への思いやりと、自分が否定された時のあり方は見事。
 宮本は、映画の中では、他の登場人物よりも誠実な常識的社会人でしたが、そんな人間の暖かさとやるせなさが両方伝わってきました。

 村岡の佐野さんは、書けない作家そのものでしたね。あの絶望感で映画の世界がより深くなりましたから…。

 寺島しのぶさんの奥さんは、普通の我慢する妻のようであり、どこかで何か思いっきりはじけそうなギャップがなかなか良かったです。

 ミクは、ちょっとファニーフェイスな趣里さんがぴったりはまっていました。まっすぐな感性と、暗い過去。そんな不可思議感が良く出ていました。


 詩的でわかりにくいかも、なんて言ってないで、感じたままを見よ、をそのまま地でいってる気がする映画でした。


"―ぼくはまだ黒い芯を高ぶらせている―"

 これは何かに入り込んだ時でないと、経験できない「なにか」なのかもしれません。

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