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2012年7月22日 (日)

映画『人が人を愛することのどうしようのなさ』感想

『人が人を愛することのどうしようのなさ』 2007年 監督:石井隆

●内容(「キネマ旬報社」データベースより)
鬼才・石井隆監督が描く“名美シリーズ”最新作。夫の不倫に傷ついて精神のバランスを崩した名美が、夜ごと売春婦として街に立つことで心を解放していく姿を描く。主演の喜多嶋舞が激しいベッドシーンを披露。R-18作品。


 1回目に見た時には、女優鏡子の裸シーンに!圧倒され、+内容を把握しようとしているうちに映画終了。

 でも、女優名美と岡野とのプラトニックのまま、でも精神的な深い関係は、「あ、これが石井監督の”ドラマ”なのだな」と実感。

以下ネタバレ。

 2回目見直して、これはたしかに一人の女性の物語なんだな、と思いました。

 石井監督は、過去の作品で、名美という女性を何度か描いているそうですが、この話の名美も一連の名美なのですね。

 この映画を見ただけでも、なんだか過去の名美も想像できそうな気がするくらい。

 女優名美。喜多嶋さん、女優魂ですが、これは裸がメインの映画ではなく、精神、魂の物語を熱演されています。

 もちろん、石井隆流、ハードなシーンもてんこ盛り。

 夫に愛されなくなった女優。その夫に冷たくされる度に、夜の街に出て見知らぬ男の相手を…。


 夫との関係が破綻し、冷たい言葉を突きつけられた時に、鏡子はかなり感情的に反応するのに、外で他人を相手にする時の鏡子は、なぜか冷静な態度。


 DVDのインタビューで、喜多嶋さんが、夫に尽くせなかった部分を(自分の尽くし方が足りないから夫は他の若い女性に走ってしまったと名美は思っている?)…相手の男にしてあげる…的な解釈をしていたということをコメントしていました。


 なるほど。夫との関係は破綻、会話も成立せず。
 でも外の男とは、目的が目的で、刹那的な関係でも、ある意味、一つの目的を共有する限り、一応の会話は成立してしまう。

 でもこれでは、心は満たされない。愛、ではない、わけね。

 ちなみに、名美を相手にする二人の男性のあり方、実際の売買春の世界でもこんな感じなのかぁと思わせるような現実感。。

 買春はするけど、根は真面目、日常は常識的でまともな大人の男として通用してそうな感じ。

 一応、その場ではフィフティーフィフティーの関係。


 だがしかし! 3人目の男、小倉によって、平穏?な関係は壊れて、破滅へと向かっていく。

 物語後半は、雪崩のような展開です。

  

 しつこく名美にせまる小倉。小倉消失後、その妻に脅迫される名美のマネージャー、岡野。

 夜の街で少しずつ精神を蝕まれていく名美と、その名美を必死にまもろうとする岡野のシーンは圧巻でした。
 
 名美の喜多嶋舞さんの迫力。舞さんがこんなすごい女優さんだったとは!

 岡野の津田寛治さんも、まさに石井ブラックの闇に包まれ、やさしかったり、必死だったり、名美をかばい、すべては名美のために……迫真の演技です。

 この二人の報われない恋。

 終わりの方で、おそらく岡野が死ぬ前に浮かぶ、若い岡野と名美の初めて出会うシーン。画面は明るいのに、あまりにも悲しく見えます。

 愛が壊れた女優と、女優をかばおうとした男の最期。。。


 音楽もすごいです。本編中のシリアスな音楽も良いですが、鏡子の(名美の)アイドル時代のプロモーションに使われた音楽。

 かわいい、アイドルらしい音楽ですが、エンディングでもアレンジされて流れていて、最後の画面にピッタリ。

 3回目はコメンタリー、音声:石井監督、岡野の津田さん、プロデューサーの阿知波さんで見てみたら、見ているだけではわからなかった部分も知ることが出来ました。

 監督の意図したこと、思いがけない俳優達のぶつかり合いで生まれたもの、等々。

 石井監督のおしゃべりは、花蛇でもコメンタリー音声聞いて知っていたけど、映画の内容に比べると!ずいぶん穏やかできわめてノーマルな感じ!(笑)

 津田さんは、監督とのおしゃべりを聞いていると、本当に素直な青年っ、という感じです。

 その津田さん、洋三郎さんのファンです!って話してましたね。
 今は同じ事務所さんに所属。

 洋三郎さん演ずる小倉が鏡子の衣装をチョキチョキするシーンから映画の雰囲気が変わっていくと、津田さんは言ってましたが、お客さんの多くは始めのほうの、電車のシーンで入っちゃったろうなぁと、私的には思います。


 そして、なによりも、喜多嶋舞さんが、ありのままの体を見せていることに驚いたとともに感心しました。

 石井監督もコメンタリーで話していたと思いますが、裸を見せる人は、もう少し美化して見せたがるものだそうです。姿勢をよくして見せるとか、体がスリムに見える方向を意識するとか、etcetc。

 3x年生きてきた、ありのままの自分、体。それから、かつてアイドルだった、でも今現在の名美も愛らしく、この感じは喜多嶋さんじゃないと出せないだろうなぁ。。。

 それらすべてが、この映画の質を高めていたようにも思われます。

 そして、洋三郎さんの、小倉の変態シーン。

 1回目見た時には反応できませんでした。。あまりにも普通の人に変態入ってる感じがすごすぎて。

 コメンタリーの津田さんに言われて改めて見直すと、ノリノリ、ノリノリ、ノリノリノリすごいパワー…。。本当に画面全体をもってっちゃってます。

 迫真の演技で頭も打っちゃったそうで、、、。


 
 他、花蛇で見ていた役者さんがあっちにも、こっちにも。


 物語性という点から見ると、彩さんを魅せる花蛇以上にこちらは物語だったように思えます。

 すべてが、ベテランの俳優さんの力量、そしてスタッフすべての情熱の入った映像。

 裸のシーンを抜いても、ものすごい迫力。

 名美、岡野の深い関係、変態ショーちゃんの狂っているようで実に現実的なあり方。
 
 すべてがプロフェッショナルな映画だと思いました。
 

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