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2012年5月 7日 (月)

映画『ヌードの夜~愛は惜しみなく奪う』感想

『ヌードの夜~愛は惜しみなく奪う』2010年 監督:石井隆

●内容(「キネマ旬報社」データベースより一部抜粋)
”1993年に「ヌードの夜」を発表した石井隆監督が、17年ぶりに竹中直人(「無能の人」)演じる“紅次郎”を主人公に作り上げた新たな物語。
とある街で“なんでも代行屋”を営む紅次郎(竹中直人)。その事務所をある日、美しい女性が訪ねてくる。彼女の名前はれん(佐藤寛子)。街でバーを営む美しい母娘3人の末娘だった。“父の散骨時に一緒にばらまいてしまった形見のロレックスを探してほしい”。世捨て人のように生きてきた次郎だったが、奇妙に思いつつも、天使のように純粋なれんを放っておけず、依頼を引き受ける。しかし、それは次郎が、3人の女たちによる完全犯罪に巻き込まれてゆく入り口に過ぎなかった-”

 まずは冒頭。いきなりすごい事になってます。
 恐るべき最強の親子。大竹しのぶさん演じる母、井上晴美さん演じる姉、そして主人公の少女、れん=佐藤寛子さん。

※以下ネタバレ

 この彼女達、母娘は(特に母姉)保険金目当てに、身元を探されないような男を家に置き、”ドゥオーモ”なる聖地で殺害、”熟成”を待ち”、保険金を受け取る。目的は、大きなビルを建て、セレブな人生を送る為。

 だが今回はやむをえない事情から姉がホームレス男性を刺殺。冒頭の、お風呂場で「解体」するシーン。中は血まみれ。大なべに解体した肉片を詰め、ドゥオーモのある富士山麓へ遺棄する為に運ぶが…。

………解体する必要あったんでしょうか? すごい手間と労働力…。はっきり言って、この親子の仕事は”ハイリスク/重労働/中リターン”だと思います……………。

 でもこのシーンで、親子3人の非日常性がドッカン、とクローズアップされます。


 石井監督の『ヌードの夜』、余喜美子さん主演の話は、代行屋、村木哲郎とふらりと現れた名美の物語でした。

 今回の『ヌードの夜~愛は惜しみなく奪う』はその10何年後だそうです。村木哲郎は”紅次郎”と名乗り、今でも代行屋を行っています。

 少女(少女から大人になる過程の女性と言った方が適切かも)れんのたくらみに乗り、まんまと乗せられながらも、れん、及び母姉に従い、人殺しに加担せざるを得なくなる、紅次郎。

 この紅次郎は、竹中直人さんがピッタリ。竹中さん、いつもテレビで見るようなふざけた感じでなく、『人が人を愛することのどうしようのなさ』のちょっと怖めの強い人間でもなく、ひっそりと町の片隅で生きる、生真面目で優しい純粋な男性を見事に演じられていました。

 代行屋の仕事の最中、手配中の空き巣と間違えられ、女刑事ちひろにボコボコにされながら逮捕され、誤認逮捕だったとちひろが謝りに行くと「もういいですよ」とソフトに対応。

 次郎のキャラがこれらのシーンで、ばっちり把握できました。

 結局、母や姉に、れん自身はうとまれ続け、虐待するひどい父親からも完全に逃れられず、父親殺しを決意するれん。

 しかし、この親子間の虐待の問題。実際ここまでとは言わなくても、ありえるんですよね。。以前、元刑事さんの書いた本を読んだ時も「子を売る」話が出てきましたから…。

 とにかく、れんは自分は父親の実の子だから保険金が取れると、母姉とともに次郎を巻き込み、父親に毒を盛り「ドゥオーモ」へ運ぶように仕向けます。

 ドゥオーモ。富士の樹海中にあるという、元石切り場。親子の「熟成」を待つ現場。


 ----------セットがすごい!……これセットですよね? もう少し小さな空間を想像していたのですが、大きな聖堂のような(それ以上)、完全な異世界。


 石切り場に残された石片や、同じ質の石の大きなホワイトグレーがかった壁。


 れんが「(ここに)何かいる…」と言いますが、あれだけの石に囲まれた場所があれば、樹海の中以上に磁場も乱れそうだし、居るだけで精神がおかしくなりそうな場所です。


 父と愛人を葬り去った後、自分をいじめていた姉をれんは殺害。又、母親を「(虐待を)知ってたくせに見て見ぬふりをした!」とせめますが、母親は夫を取った女だから、れんの事は嫌いだったと。

 そして姉が死んでいるのを見つけて、母は発狂して地底湖に…。

 大竹しのぶさんの狂気の演技。面白すぎ。


 次郎の殺害まで図ろうとしたれん。自分に鞭打って傷をつけながらも、次郎をだましたれんの暴走を、次郎は次郎なりのマジメで優しい態度で止めようとします。


 カメラは天井からの目線。天井から何か光るものがれんと次郎に降り注ぎ、れんの心に何かが灯った?次郎の心が通じた?かと思われた瞬間、ドゥオーモまで彼らを追ってきた刑事、ちひろが最後に射殺。

 映画最後のシーン。れんを失った次郎は、呆然と椅子に座ったまま。その次郎を、手作りのお弁当を持って毎日通う、れんを射殺してしまった、ちひろ。

 始めは、ちひろに大して何の反応も見せなかった次郎。

 でも時間のおかげでしょうか? または偶然現れた野良猫ちゃんのおかげで少しずつ心を開いてきた次郎。何回目かに、お弁当を開き、ちひろにも一緒に食べようと誘う次郎。


 私がちひろの立場だったら、次郎の大切な人を射殺してしまったなら、二度と次郎に近寄れない気がしますが。。

 ちひろは違う選択を。

 このちひろという人物。かつての石井監督作品郡にも登場したらしい人物のようです。今回は刑事として登場し、最後は次郎を支えようとしていますが、ちひろはそんなキャラ?


 この優しいエンディング。石井監督の作品としては珍しいそうです。

 この先の次郎はどこへ向かうのか? 次郎の物語の続編はあるのか?

 ↑わかりませんが、次郎は名美、れんのような女性が現れたら、また同じように助けようとしそうな気がします。自身がボロボロになってもね。。。


 

演技について:

 竹中さん、優しいマジメな男を好演。映画を見終わり、これは前作、余喜美子さんが名美の『ヌードの夜』もぜひ見なくては、と思わせてくれました。

 大竹しのぶさんは、はっちゃけたバーの女将を熱演。血まみれの風呂場でスパスパタバコ、「やっぱ、ドゥオーモの熟成に限るね!」。井上さんも実生活ではお母さんになられたそうで、より強い女を熱演。

 そして、れん。佐藤寛子さん。演技は初めて? れんは少女から大人になる中間くらいの女性、といったイメージですが、声がまるっきり少女のもの。
 その幼めの声が、独白シーンなどで多少軽めに聞こえたこともありましたが、より次郎の心を捉えた、という点でかえって大きな効果に。
 ブログで感想など探してみると、佐藤寛子さんは、特に若い男性からの支持が大きいようです。

 そして彼女のヌードシーン。かなりあります。私が見たのはディレクターズカット版で、過激すぎて切られていたシーンを追加したものですが、正直、それほど過激とは思いませんでした。

 『花と蛇』の杉本彩さんのしごかれ方。『人が人を愛することのどうしようのなさ』の電気ショック!売春!の体当たりの演技からすると、今回のれんのヌードはソフトな感じ。あ、でも一般に公開される映画の中ではやはりR18の内容かな。

 お風呂場で父殺害を決意するシーン。ドゥオーモで一人、次郎をだます為鞭を打つシーンは……ヌードとしてはソフトで、この年代にしかないとてもきれいなヌードだったと思います。

 ただ、ドゥオーモの鞭打つシーンは長いですね……。セリフとか動作、きちんと決められてたんでしょうか? 『花と蛇』の杉本さんが裸で踊るシーンも、映画に納められていたものの何倍も長い時間踊っていたそうですが、れんのこのシーンも映像よりもはるかに長くドゥオーモ内をさまよい続けたんじゃないでしょうか。

 考えるだけで大変……ヌード以上にこれは大変…。れんのやるせない気持ちを表しながらの熱演……。何10分の撮影で済みましたか? 私が一番この映画の大変さを感じたのは、このシーンです。

 そして……今回は、『人が人を愛することのどうしようのなさ』よりは出演時間が短いらしい洋三郎さんは、映画を見る前、ひょっとしたら主人公に悪さしてぶち殺される!悪~い男の役かなぁ?などと興味津々だったのですが、、、、、、、、

 ぶち殺されたのは、れん=たえを追い回していたポン引き男の津田寛治さん。見事な死にっぷりを披露。

 で、あれ? 洋三郎さんは刑事さん? で、ちひろの上司。2hサスペンスみたい。いや、2hサスペンスの刑事さんより、より、おっちゃん。普通普通のおっちゃんみたいな刑事さん……。

 ちひろが電話で逮捕した(誤認だけど)男の報告をしている間、いかにもおっちゃんらしく首にタオル巻いて、窓の外を見ながら「明日は孫の運動会なんだ~孫はかわいいんだ~娘はかわいくないんだけどな~」などと独り言をつぶやき、つぶやき、、おっちゃんモード全開………。

 それ、実生活とかぶってますか? とつっこみたくなる普通生活者のおっちゃんぶり。。


   わーい、おっちゃんだよーーおっちゃんだよーーーーー


            おっちゃんコールがドゥオーモにコダマしそうだ…………


    残念ながらおっちゃんすぎて、聖地のようなドゥオーモでの撮影はなかったですね(笑)


 そういえば、今回のDVDは残念ながら、石井監督とどなたかのコメンタリーはありませんでした。その代わり、出演者皆さんのメイキングとインタビューが細かく入っていて面白かったです。

 常連さんもばっちり入ってますしね。ナレーションは常連の洋三郎氏。

 音楽は、石井監督作品をたくさん手がける、安川午朗さん。今回は、とても穏やかな音楽なのですが、独自のレトロ感?メロディで映画の世界に引き込んでくれました。

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